【背景】
めまいと頸部痛を訴える患者さんが救急外来に搬入されました。
上司が「吃逆もあるし、椎骨動脈解離は精査した方がいいね」と言っていました。
なぜ???
【疑問】
椎骨動脈解離でなぜ吃逆が出るのか?
【答え】
椎骨動脈解離では、吃逆の中枢にあたる延髄に梗塞病変を生じやすいから
【説明】
そもそも吃逆とはしゃっくりの事である。
48時間以内に治るものを良性吃逆発作と呼ぶ。
48時間以上1ヶ月以内のものを持続性吃逆、1ヶ月を超えるものを難治性吃逆と呼ぶ。
発症機序を考える際には、原因として中枢性と末梢性を考える事になる。
中枢性:延髄
末梢性:迷走神経、横隔膜神経、横隔膜
と大きく分ける事ができる。
末梢性としては、頚部病変、胸腔病変、横隔膜病変、肝臓病変などが考えられる。
今回テーマとなるのは中枢性である延髄病変によるものである。
実際には舌咽神経咽頭枝からの刺激が、延髄孤束核を経て、延髄網様体に達する。
ここから、迷走神経/横隔神経の遠心路に刺激を送る。
図が逆さまですが、我々医療者は仰向けの画像に慣れているので、この向きの方が分かりやすいです。
網様体はやや背側の中央部分に存在します。
では、そもそも延髄の血行支配はどうなっているか?
最も分かりやすいの『画像診断Cafe』の図ではないかと思っている。
そうです、網様体は主に椎骨動脈による血行支配を受けている。
少し見にくいが立体的な図も存在する。
逆さまにしているためかなり見にくいですが、これは非常に理解を深める事に繋がる図だと思う。
一応、逆さまにする前の画像はこちら
もちろん、アノマリーはあり、主にと思うと理解しやすい。
椎骨動脈解離が生じると、解離に伴い血液灌流障害が生じて虚血になる。
いわゆる脳幹梗塞になる。
この際に生じる病変が、上記の延髄網様体に生じた場合には吃逆が出現するものと考えられる。
また、Wallenberg症候群(延髄外側症候群:舌咽神経核を含むため)で生じる場合の吃逆は約28%とされているようで、吃逆の出現は嚥下機能障害や構音障害と有意な相関があるらしい。
確かに、舌咽神経核が障害されると考えると納得できる。
最後に、蛇足ではあるが自分自身の経験としては、
吃逆をきっかけに、視神経脊髄炎が診断された患者さんや大腸癌肝転移が診断された患者さんがおり、吃逆といえど侮れないと考えてしまう。
【参考文献】
1. 画像診断Cafe
2. 入江研一,他. 頭蓋内椎骨動脈解離における延髄梗塞の特徴と機能的転帰; 2022.
3. 植村順一,他. 頭部 MRI による延髄梗塞における難治性吃逆責任病巣の検討; 2013.
4. 藤島一郎. Wallenberg症候群における嚥下障害と付随する症候; 2009.
コメントを残す