論文読解:尿路感染症とオムツパッド

【きっかけ】

先日、定期的に訪問をしている施設のスタッフから

『入所者はオムツなので感染症が心配です。』というお話をいただきました。

 

我々総合内科医は、確かに感染症関連の相談もよく受ける立場ですし、院内感染や耐性菌などにも目を光らせているつもりです。元来、尿道カテーテル留置は尿路感染症のリスクとされており、確かに不要な尿道カテーテルを早期に抜去することで感染症予防を行っております。では、オムツ内排泄がどの程度尿路感染症に影響を与えるのかは理解できているのか、、、。

感覚的には、感染リスクと思っていましたが、文献的評価はしたことがなかったので1本論文を読んでみました。

 

【論文】

Absorbent incontinence pad use and the association with urinary tract infection and frailty:A retrospective cohort study.

 2023年12月に発刊されたデンマークの看護研究ジャーナルのものになります。

 論文のPDFはこちら👉https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2666142X23000152?ref=cra_js_challenge&fr=RR-1

 

【患者背景/目的】

・65歳以上の1958人の患者

・急性期疾患で入院

・急性入院時の吸収性オムツパッドの使用と尿路感染症の関連を評価

 

【結果】

・入院前背景として、吸収性オムツパッドを使用していると尿路感染症で入院する確率が高い(オッズ比 2.00)

・重度のフレイルがあると、入院中にオムツパッドを使用するようになる可能性が高った(オッズ比 1.57)

・入院中にオムツパッドを使用するようになった患者の院内発症尿路感染症のリスクが高い(オッズ比 4.28)

 

【個人的な解説】

65歳以上の成人では、尿失禁などを背景に吸水性オムツパッドを使用することが多く、陰部の汚染に伴う尿路感染症のリスクが指摘されている。実感としても、論文の記載としても入院に際して、オムツ排泄となる患者さんは多く、入院後48時間以上経過して発症した感染症を院内感染症として、吸水性オムツパッド使用と院内発症尿路感染症の関連性を評価した後ろ向きコホート研究です。

 

サンプルサイズは十分(1482人が必要と本文記載)です。

ただし、除外要件で最終解析時には678人まで減っている点は要注意です。

一方で、除外要件は結構厳しいため、除外された後の要件で考えると非常に限定的である一方評価として価値の高い内容とも思えます。

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表5が最終的な評価として有用です。

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新規に入院中に吸水オムツパッドを使用するようになると、尿路感染症を発症頻度は2倍になる(77% vs 38%)。オッズ比としては、入院中にオムツパッドを使用するようになった患者の院内発症尿路感染症のリスクはオッズ比 4.28倍になる。

 

そのオムツ使用になる頻度はというと、今回の研究で入院に伴いオムツパッドを使用していなかった患者の50%が新規にオムツパッドを使用するようになっていることも判明している(635人/1250人=50.8%)。特に、重度の介助が必要になったり、フレイルが進行しているとより、オムツ排泄になる頻度は2倍以上になっている(54% vs 22%)となっている。また、表での記載はありませんが、吸水オムツパッド常用使用(full time user)の11%が尿路感染症を発症したのに対して、一時的なオムツパッド使用者では2%が尿路感染症を発症と記載されています。

 

以上より、介助を要するほどの急性期入院が相当なリスクになる、ことがわかったりました。また、もしオムツパッド使用が必要な場合でも、常時使用よりは一時的な短期使用の方がよいと思われます。

 

【気になる点】

ただし、ちょっと気にある点があります。

表2をよくみますと、尿路感染症発症の割合は

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・オムツパッド使用:289人/703人=41.1%

尿道カテーテル留置:33人/92人=35.9%

・トイレ排泄:223人/611人=36.5%

となっています。

オムツ排泄 > トイレ排泄 > 尿道カテーテル留置、の順で割合が高いことになります。

これは、なんとも実臨床の感覚とはズレている気がしてしまいます。

カテーテルが一番リスクが高い気がするのですが、、、。


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